図面の描き方:考古学編

図面の描き方:考古学編

描き方:考古学編

著者: Yolanda Peláez Castellanos
翻訳:Reina Nishihara

パート1:フィールド(現場)

考古学者は、発見したすべてのものを記録する責任を負っています。出土した資料は、その遺構の状況(コンテクスト)だけでなく、過去の人間の活動に関する貴重な研究情報を提供してくれるからです。一度資料が完全に記録されると、それらは元の場所から取り除かれます。そのため、現場で可能な限り多くの情報を記録しておくことが不可欠なのです。

現場での図面作成(実測)はこの記録プロセスの一環であり、考古学者が発掘エリアで「何を」「どのように」発見したかを捉えながら、その状況を手書きで描き出す作業が含まれます。

断面図(プロファイル)

山道をドライブしているときに、切り立った岩肌から露出した土や堆積物が、何層にも重なって異なる色合いを見せているのを目にしたことはありませんか?

岩山の断面(写真提供: https://www.pngegg.com/en/png-boaxc).

さて、考古学の話に戻りましょう。

「断面(プロファイル)」という言葉を、発掘区画の「壁」だと考えてみてください。
先ほど例に挙げた岩肌や積み重なった堆積層は、まさに発掘現場の断面そのものです。

断面図は、その場所の歴史を理解するために非常に重要です。なぜなら、堆積物の色の違いや成分の構成によって、異なる時代の流れがそこに刻まれているからです。

この土層の情報に、建築物や人間による土地の改変といった要素を組み合わせることで、以下のような多くのことが見えてきます。

  • 建物が自然に崩落したのか

  • 後から穴が掘られた(貫入)形跡や、盗掘の跡があるか

  • 建築要素(床、壁、水路など)が、空間的・時系列的にどこに位置していたのか

層位学(ストラティグラフィ)についてさらに詳しく知りたい方は、ぜひ「発掘調査(Excavations)」もご覧ください。


断面図(プロファイル)の例(作図:Amparo Robles)

そもそも、なぜ図面が必要なのでしょうか? 「写真だけで十分ではないか」と思うかもしれません。

実は、図面と写真は、調査においてお互いを補完し合う関係にあります。

写真は色を正確に捉えることができますが、どうしても特定の角度からの撮影になるため、フレーム内に収まる情報には限界が生じます。

一方で、断面図などの図面は、縮尺を守って精密に描かれるため、対象を歪めることなく正確に記録できます。また、肉眼でははっきりと判別できても、写真に撮ると不明瞭になってしまうような微細なディテールを、描き手の観察眼によって明確に残すことができるのも図面の大きな利点です。


平面図(プラン)

平面図は、発掘区画を真上から見た、いわば「鳥の目」の視点で描かれる図面です。

この図面によって、さまざまな建築要素(壁、階段、柱穴など)がどのように配置され、互いにどのような位置関係にあるのかを一目で把握することができます。断面図が「時間の積み重なり」を記録するものであるのに対し、平面図は「空間の広がり」を記録するものと言えます。

平面図(プラン)の例(作図:Amparo Robles)

特殊な遺構(Special Contexts)

埋葬跡、ゴミ捨て穴、献納遺構といった、人間の活動を直接的に示す特別な遺構も、詳細な平面図として記録されます。こうしたケースでは、個々の遺物を取り上げる前に、その正確な位置や分布を描き込み、それぞれに固有の番号を割り振ります。

次の画像は、フロントA(2018-2019年の調査結果を参照)で発掘された、数千ものバラバラになった骨(そのほとんどが人骨)を含む遺構の図面です。

図の中に示された AからE の骨が、体のどの部分か分かりますか?

  • A: 下顎骨(かがくこつ / Mandible)

  • B: 橈骨(とうこつ / Radius – 前腕の骨)

  • C: 肋骨(ろっこつ / Ribs)

  • D: 大腿骨(だいたいこつ / Femur – 太ももの骨)

  • E: 頭蓋骨(ずがいこつ / Cranium)

このように詳細な図面を作成することで、骨がどのような状態で置かれていたのか、あるいは投げ込まれたのかといった、当時の儀礼のプロセスを詳しく分析することができるのです。

遺構図の一部(作図:Ariel Texis)

パート2:デジタル化(デジタライゼーション)

デジタル化とは、現場で描かれた手書きの図面を、コンピュータで処理できるデジタル形式に変換するプロセスです。各フィールドシーズンの終了時には、すべての現場図面がスキャンされます。これには、元の図面を損なうことなく「保存」すること、そして「清書(リファイン)」して精度を高めることという、2つの重要な目的があります。

スキャンされた各図面は、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Corel Drawなどのイラストレーションソフトを使って、デジタル上でトレースされます。これにより、最終的な図面は余計なノイズが取り除かれ、必要なディテールが整理された、清潔で明瞭なものになります。

以下の、デジタル化された断面図(プロファイル)と平面図(プラン)を見てください。

矢印は、床や日干し煉瓦(アドベ)の壁などの建築的な特徴を示しています。ここで注目してほしいのは、平面図には「床 F-015」が描かれていないという点です。

この床は、その下にあるものを調査するために取り除かなければならなかったため、平面図からは消えています。しかし、断面図にはその痕跡がしっかりと残っています。このように、垂直方向(断面図)と水平方向(平面図)の表現では見えるディテールが異なり、遺構を正しく理解するためには、その両方が不可欠なのです。

フロントFの南東セクションに位置するこの発掘エリアについて詳しく知りたい方は、「2018-2019年 調査結果」のセクションをご覧ください。

Example of a digitized profile drawing (Drawing by Amparo Robles).
Example of a digitized plan drawing (Drawing by Amparo Robles).

これらの資料は現在も分析が続けられていますが、これらの図面は遺構を解釈する上で非常に大きな助けとなります。なぜなら、発掘エリア全体にわたって、資料が「空間的にどのように分布していたか」を正確に描き出しているからです。

写真だけでは重なり合って見えにくい数千もの骨も、図面化することで一つひとつの位置関係が明確になり、それが儀式的な埋葬だったのか、あるいは別の目的で集められたものなのかを解き明かす重要な鍵となります。



特殊な考古学的遺構のデジタル化図面の例(作図:Ariel Texis、Yolanda Peláez)

パート3:ラボでの遺物図面作成

毎回の発掘シーズンでは膨大な量の遺物が回収されるため、現実的にはそのすべてを図面にすることはできません。そのため、分析の過程で考古学者や専門家が、その遺構を代表するものや、特にユニークな資料を厳選してイラスト化(実測)します。

ラボでの作業工程は現場での図面作成と似ています。まず、正確な測定と縮尺を保つために、方眼紙に鉛筆で下書きをします。イラストレーターが実際に遺物を手に取り、観察することで、写真では判別できないような微細なディテールを捉えることができます。その後、スキャンしてデジタル化するか、インクを使って手作業で清書(トレース)を行います。


遺物の図面からどのような情報が得られるのか?

得られる情報は実にたくさんあります!
情報の種類は遺物によって異なりますが、通常は「その物体がどう作られたか(製作)」や「どう使われたか(使用)」に関連しています。

  • 土器(セラミックス) 私たちの発掘調査で最も多く見つかる資料です。図面にすることで、器のさまざまな形状、装飾技法、そしてそこに描かれた図像(アイコノグラフィー)を明らかにすることができます。
  • 石器(リシックス) 石の原材料がどのように加工されていったか、その体系的な工程を示すことができます。これには、職人自身が行った判断(例:仕上げの微調整など)の痕跡も含まれます。
  • 骨(ボーンズ) 解剖学的な特徴を描き出すとともに、人間によって施された表面の改変(例:解体時の切り跡や、道具製作の痕跡)を強調して記録することができます。
カンデレロ(Candelero)の図面の例(作図:ヨランダ・ペラエス)

考古学的な遺物は断片化していることが多いですが、特定の破片(例えば土器の口縁部=リムなど)を使えば、完成した器がどのような姿をしていたのかを復元することができます。

こうした復元部分は、通常「点線(dotted line)」で描かれます。

マヤ様式の浮き彫り(プレーン・リリーフ)沈線文が施された三足土器の蓋、およびその蓋と対になる可能性のある胴部の破片(作図:ペドロ・カワンツィ・エルナンデス © プラザ・オブ・ザ・コラム・プロジェクト。図版は Sugiyama et al. 2020:152-153 Figs. 5.9, 5.10より引用)

結論

考古学者は、フィールド(現場)とラボ(研究室)の両方において、目にする細部を細心の注意を払って描き出します。

「観察」は科学的手法の重要なステップの一つであり、考古学における図面作成はその研究プロセスに直接貢献する不可欠な作業です。さらに、これらの図面は文化遺産を多様な形で保存するための手段でもあります。単なる二次元の記録としてだけでなく、デジタルの形式も活用することで、歴史の一瞬(スナップショット)に対する多角的な視点を未来へと残していくのです。

参考:

Pngegg
n.d. Highland Landscape Landform Plain Plateau, Mountain Landscape 2, natural, grass. Electronic document, https://www.pngegg.com/en/png-boaxc, accessed August 18, 2021. 

Sugiyama, Nawa, William L. Fash, Barbara Fash, and Saburo Sugiyama
2020 The Maya at Teotihuacan? New insights into Teotihuacan-Maya interactions from Plaza of the Columns Complex. Teotihuacan: The World Beyond the City, edited by Kenneth Hirth, David Carballo, and Barbara Arroyo, pp.139-171, Dumbarton Oaks Pre-Columbian Symposia and Colloquia series, Dumbarton Oaks Reserch Library and Collection, Washington, D.C.