出土した資料の保存

出土した資料の保存

出土資料の整理と保存管理(キュレーション)

発掘調査のシーズンが終わると、まず優先して取り組むのが、出土した資料の「整理と保存管理(キュレーション)」です。これには、回収された資料を将来にわたって守り、維持するための細心のケアが含まれます。

その具体的なプロセスを見ていきましょう。

発掘現場では、見つかった遺物やエコファクト(動植物遺体などの自然遺物)を、その素材に合わせてプラスチック袋や紙袋に収めます。このとき、どこでどのように発見されたかという「出土状況」を記したラベルを必ず添えるのが鉄則です。

Plastic bags containing archaeological materials, 2016
考古資料が入ったポリ袋、2016年。

研究室に資料が届くと、まずは袋から取り出して洗浄を行います。

出土したばかりの資料は土まみれですが、土の中には微生物や化学物質が含まれていることがあり、そのまま放置すると資料を傷めてしまう恐れがあるため、この洗浄作業は極めて重要です。ただし、骨や木材などは非常に脆いため、一般的な洗浄ではなく、素材に応じた特別な方法で慎重にクリーニングを行う必要があります。

Animal bones recovered in a quadrant during the 2016 season
2016年度シーズンに調査区(クアドラント)から回収された動物の骨

洗浄方法は、素材の種類や保存状態によって異なり、慎重に行われます。異なる発掘区や土坑から出土した資料が混ざらないよう、一度に洗浄するのは一袋分のみとしています。

土器や黒曜石の遺物は、水の中でブラシを使い、余分な土を落として洗浄します。骨については、通常は乾燥した状態でブラッシング(乾式清掃)を行いますが、状態によっては水を使って洗浄することもあります。

洗浄後は、資料を乾燥させます。乾燥の手順も素材や状態によって異なります。例えば、土器の破片や黒曜石は非常に丈夫で保存状態も良いため、天日干しで乾燥させます。一方で、骨はより脆いため、室温でテーブルの上に置いてゆっくりと乾燥させます。

Sun dried sherds, 2015
天日干しされる土器の破片、2015年。

乾燥した遺物は、出土状況(コンテクスト)の情報が失われないよう、すべて袋の番号でラベル付けされます。上のメイン写真は、ラボのスタッフが資料に注記を行っている様子です。一見すると単純な作業に見えますが、忍耐強さに加え、ペン先やホルダーを使いこなす技術が求められます。さらに、誰が読んでも判別できるように、丁寧に文字を書く能力も必要です。

このように、整理・保存(キュレーション)の工程は非常に根気がいる上に、多大な時間と細心の注意を要するため、できるだけ早く着手することが望ましいです。これを実現するためには、フィールド・シーズン終了後も地元作業員の方々に協力してもらうことが不可欠です。

ラボのスタッフは考古学者の監督の下で作業を行いますが、プロジェクトの第1シーズンだけで、さまざまな遺物やエコファクト(自然遺物)が入った袋が6,000袋以上も回収されました。その大部分は、この地域で大量に出土する土器の破片です。一袋あたりの資料数は、1点から約3,000点にまで及びます。

これらすべての資料を整理するのに、どれほどの時間が必要か想像できるでしょうか。このプロジェクトでは、キュレーションのプロセスに約10か月を要しました。つまり、第1シーズンの発掘資料を整理するために、合計1,600時間もの歳月が費やされたのです。

膨大な作業量に驚かれるかもしれませんが、ラボでの仕事はこれで終わりではありません。資料をキュレーションし、適切に保存・整理することは、あくまで各分野の専門家が分析を行うための「準備」に過ぎないのです。

考古学者の仕事の大部分は、研究室での資料分析に費やされます。「1年間の発掘に対し、回収されたすべての資料を調査するには少なくとも5年の歳月が必要である」と言われるほどです。この任務を完遂するには、多くの専門家や考古学者、そして地元作業員の方々との協力が不可欠です。

本プロジェクトでどのような分析が行われているか、さらに詳しく知りたい方は、「フィールドワーク」や「ラボ(研究所)での分析」のセクションをぜひご覧ください。