土器の破片から、どのような情報がわかるのか?
オジャ(壺)、ジャー(広口瓶)、ポット(鍋)、ベース(花瓶)などは、テオティワカンで大量に見つかる驚くほど多様な土器の形の、ほんの一例にすぎません。
こうした土器の破片には、気の遠くなるような膨大な情報が詰まっています。
考古学者たちは、バラバラになったデータを根気強くつなぎ合わせることで、その情報を読み解いていきます。ここでは、土器の分析において「いつの時代のものか(相対年代)」を判断する以外に、どのような活用法があるのかを解説します。
型式(スタイル)の進化
見つかった土器グループを時代ごとに見ていくと、スタイルの変化から「その当時のテオティワカンで何が流行していたのか」や「その流行がどのくらいの速さで変わっていったのか」がわかります。
こうした土器タイプの進化は、以下のポイントに注目して記録されます。
- デザインの種類
- 装飾の方法
- 使われている材料(粘土など)
時代による変化の例
下の図は、テオティワカンにおける土器タイプの変化をいくつか示したものです。
たとえば、初期のサクアリ期(Tzacualli Phase)の土器片はとてもシンプルですが、後期のメテペック期(Metepec Phase)の土器片と比べると、その差は一目瞭然。
メテペック期のものは、漆喰(しっくい)の上に色が塗られるなど、より手の込んだデザインになっています。
土器がどこで、どれくらい、どのような種類で見つかるかという「コンテキスト(出土状況)」の情報は、その場所でかつてどのような活動が行われていたかを復元するために使われます。
活動の復元
土器の種類や集まり方から、その場所の用途を推測できます。
- 古代の台所: 花瓶、皿、ジャー(広口瓶)といった実用的な器が大量に見つかる場所。
- 製作工房: 失敗作(欠陥品)や、作りかけの土器が集中して見つかる場所。
埋葬と儀礼
お墓(埋葬遺構)からも、葬儀の儀式に使われた土器が見つかります。こうした葬礼の場で見つかる土器は、普段使いされた跡がほとんどなく、非常に洗練されたデザインであることが多いのが特徴です。
- 例: 香炉、ミニチュアの器、トラロック神(雨の神)を象った土器など。
交易と交流
土器片の中には、明らかにテオティワカン盆地の外から持ち込まれたものがあります。
こうした「外来品」は、原材料(粘土、混ぜ物、顔料など)の産地を突き止めたり、独特の装飾や製作技法を分析したりすることで特定されます。
こうした輸入土器の量や出土場所を調べることで、古代テオティワカンとメソアメリカ全土の他グループとの関係や、移住者が暮らしていた居留地の存在が明らかになってきました。
広域なネットワーク: メキシコ湾岸、西メキシコ、オアハカ、そしてマヤ地域など、各地から持ち込まれた土器の存在は、テオティワカンがメソアメリカ中の異なる地域から人々が集まる、国際的な大都市(メトロポリス)であったことを示しています。
メトロポリスとしてのテオティワカン: 考古学者は、「薄手オレンジ土器(Thin Orange)」や「粒状土器(granular ware)」が大量に見つかることから、テオティワカンには外国からの移住者が住んでいたと考えています。
参考文献:
Rattray, E. C. 2000a. Teotihuacan: Ceramics, Chronology, and Cultural Trends. University of Pittsburgh Memoirs in Latin American Archaeology, No. 13.
Rattray, E. C. 2000b. Teotihuacan: Ceramics, Chronology, and Cultural Trends–Color Illustrations. Latin American Archaeology Database, University of Pittsburgh. <URL: http://www.pitt.edu/~laad/rattray/>
Rattray, E. C. 2001. Teotihuacan: Ceramics, Chronology, and Cultural Trends. Serie Arqueología de Mexico, Instituto Nacional de Antropología e Historia / University of Pittsburgh. Mexico, D. F., pp. 617 + tables of frequencies of ceramic wares.
