「泥にまみれたテオティワカンでの一日」毎日の発掘作業の様子を知ろう!

「泥にまみれたテオティワカンでの一日」毎日の発掘作業の様子を知ろう!

著者: Justin Tran
翻訳: Reina Nishihara

はじめに

考古学は、一見するとシンプルに見えるかもしれません。
遺跡に行って、地面を掘り進め、見つけた「昔のもの」を次々と運び出す……
そんなイメージを持つ方も多いでしょう。

しかし現実の考古学は、驚くほど緻密でハードな作業の連続です。
日々の運営には入念な計画と実行力が欠かせません。
発掘作業の多くは、実は最初のシャベルが土を叩くよりもずっと前から始まっているのです。

早朝の発掘準備から始まり、測量やマッピング、土の層の細かなスケッチ、そして見つかった遺構や遺物のタグ付けと袋詰め。そして夕方の撤収作業にいたるまで。
PPCC(プラザ・オブ・ザ・コラム・プロジェクト)の考古学者や現場スタッフは、決められた日課と手順を忠実に守っています。それは、数ヶ月にわたる発掘シーズンが終わるまでに、限られた一日一日を最大限に活用し、少しでも多くの成果を上げるためです!

今回のブログでは、テオティワカンでの発掘調査の「ある一日」を詳しくご紹介します。

博物館やニュースで目にする古い遺物が、一体どのようなプロセスを経て掘り出されているのか、その舞台裏を感じていただければ幸いです!


朝6:00、一日の始まり

朝6時ちょうど(勇気のある人はもっと早く、さらに度胸のある人はもう少し遅く。笑)、PPCCチームは現場へ出発する準備を始めます。

朝食を済ませ、フィールドウェアに着替えます。
基本のスタイルは、長袖のシャツに丈夫なパンツ(ポケットが多いと便利!)、日差しを守る帽子、そして頑丈なブーツです。

準備ができたら、現場行きのバンに機材を積み込みます。
ベースキャンプから持ち出すのは、地形の測量に使う「トータルステーション」や、小さな道具が入った工具箱(コテ、メジャー、手ピック、剪定ばさみなど)、そして道具を入れるための様々なバッグやカゴです。

シャベルやつるはし、手押し車といった大きな道具は、テオティワカンの発掘現場に保管されています。午前7時ごろ、チームは拠点のあるサン・フアン・テオティワカンを出発し、テオティワカン考古学地区へと向かいます。

サン・フアン・テオティワカン村の清々しい朝、空を見上げると、遺跡の上をゆったりと飛ぶ、観光客を乗せた色とりどりの気球が見事な景色を作っています。

現場に到着すると、いよいよ午前7時30分から本格的な作業が始まります。
まずはPPCCの活動を支えてくれている地元の現場作業員(フィールドワーカー)たちと挨拶を交わし、一緒にバンや倉庫から機材を降ろしていきます。

メキシコ中央部の夏は、午後や夜に雨が降ることが多いため、私たちは毎日の作業終了時に、大切な発掘エリア(ピット)を大きなブルーシート(タープ)で覆って守っています。
ですから、朝の最初の仕事は、この大きなシートを取り除くことから始まります。

また、夏の強い日差しを避けるために、このシートを日よけとして発掘エリアの上に張り直すこともよくあります。準備が整えば、昨日終わった場所から作業を再開するか、全く新しいエリアの掘削に取りかかります。

雨季などで、テオティワカンで特に雨が激しく降る日には、シート(タープ)は、発掘エリアを覆い中の土や古代の建築遺構が濡れて傷んでしまうのを防ぎます。

掘り始める前に:歴史は「ミルフィーユ」のよう?

話を進める前に、私たちがどのように発掘を行っているのか、その方法についてお話ししておきましょう。

まずは、色々な味の層が縦に重なった「ミルフィーユ」を想像してみてください。
ケーキを上から順に食べていくと、「一番上はバニラ味、真ん中はチョコ味、そして一番下はイチゴ味だ」と気づきますよね。

実は、考古学者が遺跡を計画的に掘り進めていく作業は、この「ケーキを食べて味の変化に気づくこと」と実によく似ているのです!

私たちは「層位学的発掘(そういがくてきはっくつ)」と呼ばれる手法をとっています。
これは、土の層を一つずつ順番に掘り下げていくやり方です。
土の色や質感が変わったことに気づいたら、そこから新しい層として扱い、慎重に掘り進めます。
土の種類が変わるということは、そこからさらに古い時代の歴史が始まっている可能性があるからです。

たとえば、地表に近い層で見つかった遺物は、より深い層で見つかったものよりも「新しい時代」のものだと考えられます。このように、土の重なり(地層)の変化をしっかり記録することで、見つかった遺物がどの層に属していたかを確認し、その年代や正確な位置を推定することができるのです。

発掘現場の断面をじっと見つめると、歴史の積み重なりがよくわかります。

実際にコテを土に入れる前には、やらなければならない測定や準備がたくさんあります。
新しいピット(発掘区)を開けたり、新しい層を掘り下げたりする前には、その層の地理的な座標を記録したり、土の質感を詳しく言葉で書き留めたりします。

この作業について詳しくお話しするために、まずはPPCCがどのように発掘の計画を立て、管理しているかを説明しましょう。

多くの考古学調査と同様に、PPCCでは発掘現場全体に正方形のグリッド(方眼)を敷いています。
新しく掘る場所は、基本的にこのグリッドの区切りに従い、1つの正方形は3メートル×3メートルの大きさです。

グリッドには、東から西へは「数字」、南から北へは「アルファベット」が順番に割り振られています。私たちは現場の場所を呼ぶとき、この名前を使います。

  • 「18Mの区画で新しいピットを開けよう」
  • 「7Kのピットを南の7Jまで広げて、さらに西の8Jまで拡大しよう」

このように呼ぶことで、発掘場所を空間的に把握し、「見つかった壁は7Kから7Jまで延びている」といった明確で正確な説明ができるようになるのです。

ハイテク機器を使った精密な測量

新しい層を掘り始める前には、まず「トータルステーション」という機器を使って測量ポイントを確認します。これにより、発掘現場の正確な位置情報を把握し、全体のグリッドからズレることなく掘り進めることができます。

測量には、トータルステーション本体と「バックサイト(後視点)」と呼ばれる、自分の位置を測るための基準点となる装置を設置します。これらを座標(XYZ)がすでに分かっている特定の場所に設置することで、装置を地理的空間の中に正しく位置づけます。

準備ができたら、あとはトータルステーションのレンズをこれから掘る層の表面に向け、正方形の四隅(北西・北東・南西・南東)を測定するだけです。伸縮式の定規と「ミニプリズム(小型の基準点)」を組み合わせることで、四隅のXY座標と、海抜何メートルかという正確な高度を導き出すことができます。

新しい発掘区(スクエア)を発掘し始めるとしましょう。
まず、その場所が計画通りグリッドに沿っているかを確認しながら、四隅に金属の棒を打ち込み、その間に紐をピンと張ります。すると、地面の上に「目に見える四角い箱」ができあがります。

次に、先ほど測量した地表の高さや座標をすべて書き留めます。それだけではありません。私たちは土の状態をじっくり観察し、「土の診断書」のようなメモを取ります。

  • 土の評価: 何が混ざっているか、どれくらい固いか、質感はどうか。根っこや石が紛れ込んでいないか。
  • 色の判定: 「マンセル土色帖(どしょくちょう)」という専用のカラーチャートを使い、世界共通の基準で土の色を正確に記録します。

その他にも、この層を掘る目的や、層の特徴を説明する文章など、膨大な量のデータを掘り始める前に記録します。こうした緻密な作業は、最初に掘り始めるときだけでなく、土の質感や色が変わって「層が変わった」と気づくたびに、毎回必ず行われます。


できる限りの情報を書き終えたら、いよいよ写真撮影です。
実際に土を掘り返してバラバラにしてしまう前に、元の状態がどうだったのかを完璧に記録に残すためです。しかし、ただシャッターを切ればいいわけではありません。

  1. お掃除: 写真をできるだけ鮮明にするために、まずはブラシやほうき、ちりとりを使って、層の表面を徹底的にきれいにします。
  2. 日よけの設営: 直射日光で強い影ができると写真が見づらくなってしまうため、タープを張って日陰を作ります。自分たちの頭上のタープだけでは足りないときは、仲間に手伝ってもらって追加の影を作ることもあります。
  3. 情報のセット: 写真の隅に、大きさの基準となる「スケール(定規)」と「方位磁針の矢印(北)」を置きます。さらに、日付、構造物の名前、区画の番号、最も高い場所の標高などを書き込んだ「ホワイトボード」を設置します。

現場のiPadとデジタルカメラの両方で撮影を済ませたら……
ここでようやく、(本当にやっと!)掘り始めることができるのです。


発掘開始前に撮影された写真。ホワイトボード、スケール(定規)、北を示す矢印、および区画の境界線が示されている。
写真撮影の前に、層の表面をきれいにしてホワイトボードを準備している様子。

いよいよ発掘開始!

現場作業員たちは、掘り出した土をバケツに入れ、近くに設置された「ふるい(メッシュスクリーン)」へと運びます。

土をこのふるいにかけると、細かい土の粒子は下に落ち、大きな物体だけが網の上に残ります。網に残るものは、ただの自然の石であることもあれば、土器や石器といった「遺物」、あるいは炭や骨などの「有機物」であることもあります。

これらの中から貴重な資料を見つけ出し、大切に保管するためにポリ袋へ入れていきます。

特に「炭」などの有機物は、他よりもいっそう慎重に扱われます。

  • 専用の道具: 殺菌済みのコテを使って取り出します。
  • 特殊な袋: 「Whirl-Pak(ワールパック)」という特別な密閉袋に入れます。

なぜこれほど神経を使うかというと、炭は「放射性炭素年代測定」などの高度な分析に使えるからです。人間の手には分析を妨げる「不純物」がついているため、素手で触れて汚染(コンタミネーション)されないよう、細心の注意を払って扱うのです。

最後は「元通り」にするのがルール

発掘中に出てきた大量の土や石は、調査エリアの周囲に積み上げておきます。
そして、数ヶ月にわたる発掘シーズンがすべて終わると、私たちはその土や石をすべて元の穴の中に戻します。これを「埋め戻し(バックフィリング)」と呼びます。

露出した建物や土を再び覆い、まるで「最初から誰もいなかったかのように」元の姿に戻して、そのシーズンの調査を終えるのです。

PPCCの現場作業員が、遺物を見つけるためにバケツに入った土をふるいにかけている様子。
PPCCチームがコテ、手斧、チリトリ、バケツ、ブラシ、シャベルを使って発掘区を掘り進めている様子。

遺跡から見つかるのは、手で持てるような小さな遺物だけではありません。
時には、古代テオティワカンの人々が築いた壁や漆喰の床、柱の跡(ピット)といった、大規模な「遺構」が丸ごと姿を現すこともあります。

こうした巨大なものは、当然小さなポリ袋に入れて持ち帰るわけにはいきません。そのため、壁や床に遭遇したときは、できる限り「そのままの状態」で保存できるよう最善を尽くします。そして、その位置、高さ、長さ、幅、形状、さらには他の遺構との位置関係にいたるまで、ありとあらゆる測定を行います。

ときには分析のために、床にドリルで小さな穴を開けて破片を採取したり、壁の一部を薄く削り取ったりしてサンプルを作ることもあります。また、古代の床の上に積もった土や、遺物が集中している場所の隣にある土を採取することもあります。こうした土壌サンプルも、炭と同じように「汚染(コンタミネーション)」を避けるため、細心の注意を払って扱われます。

一区切りの「パッキング」とデータ入力

一つの層を掘り終え、次の層へ移るタイミングが来たら、その層で見つかったすべての遺物の袋を密封します。そして、それぞれの袋に「タグ」を取り付けます。ここには、以下のような詳細な情報を記します。

  • 袋の番号
  • 遺物の種類(土器、石器など)
  • 発掘エリア名(フロント)、構造物名、層の名称
  • トータルステーションで測定した高度

これらの情報はすべて、現場にあるiPadを使って専用のデータベースにも入力されます。こうして整理された資料はカゴに入れられ、バンの荷台へ。一日の終わりには、分析と保管のために遺跡内にある専用施設へと運ばれていきます。

「カシータ(仮設の作業小屋)」の下で、土壌サンプルのためのタグを書いている様子。

ハイテクと手仕事で遺す「遺跡の記憶」

層を掘り進め、遺物を見つけるプロセスの中でも、私たちは常に写真撮影やトータルステーションによる測量を続けています。

そして、その区画の「終着点」まで掘り下げたと判断したとき、いよいよ特別な記録作業が始まります。まずはドローンを飛ばして、真上から区画全体の空撮を行います。さらに、さまざまな角度から何枚も写真を撮影します。

これは「フォトグラメトリ(写真測量)」と呼ばれるプロセスのためです。
異なる角度から撮った大量の写真をデジタル上でつなぎ合わせることで、発掘現場の精巧な「3Dモデル」を作り出すことができるのです。

断面図(プロファイル)を描く:考古学の真髄

一方で、考古学の記録において非常に重要なのが、人の手による「断面図(プロファイル)の作成」です。これは、発掘区の側面に現れた「地層の重なり」を、スケッチとして手描きで記録する作業です。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 基準線を引く: 発掘区の壁面に沿って、水平に紐を張ります。
  2. 一点ずつ測る: その紐を基準にして、地表のラインや建設当時の盛り土、入り込んだ石、あるいは床などの建築遺構が、「紐からどれくらい下にあるか」を水平方向に沿って細かく測っていきます。
  3. 図面化する: 測った数値を元に、地層の境界線を紙に描き写していきます。

非常に大きな、あるいは深い断面を描く場合には、トータルステーションを使って正確な距離を測定することもあります。こうして完成した断面図には、詳細な地層情報だけでなく、建築物の正確な寸法も記録されています。これらは後の分析において、何物にも代えがたい貴重な資料となるのです。


「石柱の広場」における、断面図(プロファイル)の作成の様子。

「仕事」だけじゃない?現場のひととき

発掘調査は、非常にハードで根気のいる仕事です。でも、朝から晩までずっと穴の中にいて、掘ったり、図面を描いたり、記録を書き続けたりしているわけではありません。

5時間ほどの集中した作業を終えた午後12時から1時までの1時間は、大切な休憩時間。

みんなで食事をとり、リラックスして過ごします。中には、この時間を利用して「お昼寝」で体力を回復させる、タフなチームメンバーもいるんですよ。

退屈とは無縁!活気あふれるPPCCの現場

「発掘現場」と聞くと静かで黙々とした場所を想像するかもしれませんが、PPCCのピットはそれとは程遠い、とても賑やかな場所です。作業中もあちこちでお喋りが飛び交いますし、お互いの発掘状況や他の調査エリア(フロント)の様子を見に行ったりもします。
「カシータ」と呼んでいる小さな作業小屋で軽食をつまんだり、飲み物を飲んだりして一息つくのも大切な時間です。

現場にはいつも音楽が流れています。バケツの中にBluetoothスピーカーを入れるという「画期的なアイデア(!)」で音を増幅させ、発掘現場全体に響き渡るようにしているんです。

時には見学者が訪れることもあります。

そんな時はチームメンバーが案内役となり、今ここで何をしているのか、そして日々見つかっている驚くような発見について、少しだけお話しすることもあります。

あ、そうそう。訪ねてくる「見学者」は、人間だけとは限りませんよ!

テオティワカンでの「ある一日」の締めくくりから、現場を離れた後の緻密なデスクワーク、そしてこのプロジェクトに込められた想いまで。最後の一文まで、ライターであるあなたの言葉として響くように丁寧に整えました。


PM 4:00 | 撤収と家路

長く充実した一日の終わり、午後4時になると、片付けの時間です。

大きなシート(タープ)を再び発掘エリアに被せ、風で飛ばされないよう大きな石でしっかりと固定します。コテやブラシ、トータルステーションなどの精密機器は、それぞれの道具箱や収納ケースへ。シャベルやつるはし、プラスチックの椅子を積み込んだ手押し車は、保管庫へと運ばれていきます。

PPCCのチームメンバー、考古学者も現場作業員も、お互いに別れの挨拶を交わして、帰路につきます。その日集められたすべての遺物を積み込んだバンは、資料を届けるために出発します。

すべてが終わった後、チームは夕食と休息、そして(何よりも楽しみな!)温かいシャワーを浴びるために、それぞれの家へと帰るのです。

現場の外での「もう一つの発掘」

しかし、プロジェクトの仕事は現場だけで行われるわけではありません。

発掘がお休みの日は(通常は週の終わりに)、その週に集めた膨大なデータを整理するためにベースキャンプで過ごします。

  • データの登録: 写真の内容を記述してデータベースに登録。
  • 記録の統合: 土の層や発見物に関するすべてのメモを、プロジェクトのデジタルノートにまとめます。
  • 図面のデジタル化: 手描きした断面図や平面図を、Adobe Illustratorを使ってデジタルデータに書き起こします。
  • 測量データの保存: トータルステーションで測定した座標ポイントを、プロジェクトのコンピューターに保存します。

これらすべての作業は、シーズン終了後の報告書を作成するため、そして私たちの発見が正しく記録され、将来の研究や次なる発掘のために保存されるようにするために欠かせないプロセスです。


おわりに

テオティワカンでの調査生活は、決して退屈なものではありません。
そして、単に場所を選んで真っ直ぐ掘り進めるよりも、はるかに複雑で奥の深いものです。

遺物のタグ付けや袋詰め、断面図の作成、トータルステーションによる測量……。
私たちのチームは、限られた時間の中で、古代テオティワカンの活動、建築、物質文化についてできるだけ多くの情報を引き出せるよう、徹底的に計画し、実行しています。

次にあなたが、新しい考古学的発見のニュースを読んだり、博物館で古い遺物を目にしたりした時は、ぜひ想像してみてください。
過去の歴史や文化を私たちが学び、保存していくために、その舞台裏でどれほどの懸命な努力と細やかな配慮が注がれているのかを…。

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